先日、2/24(土)~25(日)に『君と免疫。展』という展示会イベントが開催されました!
今回は嬉しいことにプレス向け展覧会にお声がけいただき、イベント開始前日の2/23(金)に会場に訪問。
直接アーティストさんのお話や裏話をお伺いする機会をいただき、記事作成云々よりもシンプルに楽しむことができました。いやあ、ありがとうございます!
目次
『君と免疫。展』とは?
こちらは株式会社明治がスタートした『Do Wonders』というプロジェクト発信のイベントです。
あまり馴染みのない『免疫』というものを楽しく学んでもらおうという趣旨で始まったもの。
この『君と免疫。展』はそのプロジェクトの第一弾となります!
また、今回のイベントは開催期間が二日間と短かめ。なのでタイミングが合わず見れなかったという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、プレス向け展覧会で撮影した写真含め、展示会の内容や魅力等まとめてお送りしたいと思います。
来れなかった方はぜひこの記事で当日の雰囲気をお楽しみください!
*今回本記事に掲載された写真及び動画は全て、主催者の許可のもとプレス向け展覧会にて撮影したものです、あらかじめご了承ください。
入り口からすでに予想外
まず扉を入ると目の前にこのような物体が……。
え、顕微鏡?なんでしょうか、これで免疫でも覗けということ……?疑問に感じながらのぞいてみると……、
#ぶらりのブログ用 pic.twitter.com/RRNATZIOUo
— ぶらりぼっち日和@食レポ系ブロガー (@hitomishiri_da) 2018年2月24日
!!!これは面白い。『今回のイベントコンセプトを顕微鏡で覗ける』というアトラクションなんですね。
免疫ということと掛け合わせて顕微鏡で文字が見えるようにするとは……。これは頭をひねったお出迎えですねえ。
作品①bridge
さあ、ここからは展示作品のご紹介です!最初にご紹介するのは『bridge』という作品。
入り口付近にデデンと吊り下げられたこちら!実物はかなり迫力があります。みなさん、これは何で作られていると思いますか?実はですね……、
なんと全てバルーンで出来ているんです!目の前にすると本当に圧巻……!迫り来る迫力がひしひしと伝わってきますねえ。
こちらはバルーンアーティスト『細貝里枝さん』と、グラフィックデザイナー『河田孝志さん』による作品。
河田さんがコンセプト等を決め、それを細貝さんがバルーンで表現したものです。
このバルーンで表現しているのは、グレーバルーン(免疫)がホワイトバルーン(病原体)を攻撃している様子。
ちょうどこの境界線部分では、病原体を撃退するために免疫が進行しているように見えます。下から見ると迫力満点……!!!
どうして『bridge』?
免疫には種類がありますが、今回お二人が着目したのが『自然免疫』と『獲得免疫』というものでした。
この免疫を行き来しているのが『樹状細胞』という物質。
これは侵入者を発見し攻撃すると同時に、その経験を元に新たな免疫を生み出すための情報の架け橋となっているのだそうです。
この作品を創ったお二人も、
『バルーンアーティストの先人に敬意を抱きつつ、さらに外側の世界へと目を向け新たな表現を実践していく』
という思いを抱え活動しており、それが今回の免疫情報の架け橋という部分にマッチしたとのことです。
これまでの経験を踏襲しそこから学ぶべきことはきちんと学ぶ。しかしそれだけではなく、その経験を架け橋としながらさらなる進化を目指していく
免疫やアーティスト活動だけでなく、あらゆることに通じるこの想いがバルーンアートに込められているように思いますね。
作品②無意識と意識が介在する庭
お次に目に飛び込んできたのはこちらの作品。
サボテンと黒い液体……?これは一体……?
こちらは建築家『吉田愛』さんの作品。正直ぱっと見では何を表現しているのか、捉えるのが非常に難しい。
だって全く繋がりが見えませんからねえ、サボテンと謎の黒い液体……。
果たしてこれにはどういった思いが込められているのでしょうか?
無意識ってどんな存在?
そもそも僕らが普段の生活の中で自分の免疫活動について意識することってありますでしょうか?
おおおおおワイの免疫今めっちゃ頑張ってるぜええええ!
なんて実感できてる人はまずいないでしょう。
かろうじて風邪で寝込んでる時に「バイキンと戦ってるのかな?」とやんわり感じるくらい。
普段から自分の体内で起きていることを意識している人なんていないはずです。
しかし僕らが思うと思わないに関わらず、体内では免疫や細胞が日々働き続けています。
このイベントを見ている時も、勉強している時も、誰かといる時も、こうしてイベントレポートを書いている最中にも。
今回のサボテンは『僕らが普段意識している箇所』を暗示しています。これがサボテンということはわかりますよね。トゲトゲしていて、緑色で、生きてるかどうかはイマイチわからない、というような。
対してこの黒い液体は『僕らの無意識の部分』を表現しています。これはまずは動画で見ていただいた方が時間が湧きやすいですね。
#ぶらりのブログ用 pic.twitter.com/YKilHDCgpZ
— ぶらりぼっち日和@食レポ系ブロガー (@hitomishiri_da) 2018年2月24日
これは砂鉄に近い物質をオイルに入れて、それに動きをプログラムすることで泡立たせています。
一見すると動いているかどうかわからないような『サボテン=意識的に感じる部分』。
でもその中にも、確かにうごめく免疫や細胞というものがあり彼らの体を守るために日々戦い続けています。
それがちょうどこの『泡立ち=無意識の部分』ということになるんですね。
さらに、泡の動きが若干変なことも気付きましたか?泡立ちが起こると普通はもっとハジけて水面ができたりするものですが、これはほとんど動きません。
もちろんこれもプログラムされた動きではありますが、制御できそうでできない細胞の動きというのを表現しているのです。
個人的には黒い液体で無意識の部分を表現しているのも面白いなと感じました。
だって緑でトゲトゲしたサボテンからはこんな黒い液体なんて絶対に想像できないじゃないですか!
でも考えてみてください。確かに『無意識』の部分なんて普段の僕らにはわからないですし、サボテンの無意識の部分がこんなどす黒い液体であっても不思議ではありません。
意識と無意識の間にあるギャップーーーそれをサボテンと黒い液体で表現しているのはかなり面白いです!
作品③幻想免疫図鑑
続いてはイラスト作品です。イラストレーター『石井正信さん』による作品が11点展示されています。
これらは様々な種類の免疫や細胞を、石井さん独自のイラストレーションによって書き上げられた作品。
展示されたものは全て原画となっており、間近で見るとその凄まじい迫力を感じ取ることができます!それではイラストとそれを簡単に説明していきましょう。
ちなみにタイトルは掲示されていたキャッチコピーです。
君の強さに生まれ変わる
こちらは『乳酸菌1073R-1株』をイラストにしたもの。
この乳酸菌は、免疫活動を活発化させる『EPS』と呼ばれる物質を多く生み出します。まさに体を強くさせる菌そのもの。タイトルにもその強さが現れています。
守りたい。だから、食べる。
こちらは『マクロファージ』を表現したイラスト。『体内の見回り警備員』として、侵入者を即座に識別し食べ尽くす役割を持っています。
勝てない相手であれば応援要請をしたりと体内の第一次防衛ラインとして大活躍の免疫。キャッチコピーからも、その苦労が哀愁とともに漂います。
命がけの情報を、仲間へ。
樹木の枝のような突起を持ち体内のあらゆる場所に存在している『樹状細胞』。 侵入者への攻撃の役割も果たしますが、それ以上に情報伝達者としての役割が重要です。
侵入者の特徴を分析しそれをどんどん上の細胞へと繋いでいく。まさに先ほどの情報の『架け橋』となりうる存在の細胞です。
その名も、「殺し屋」。
凄まじいキャッチコピーのこちらは『NK細胞』をイラスト化したもの。厨二感がたまらない。
マクロファージの一時防衛ラインをくぐり抜けた侵入者を排除したり、突然変異した細胞を食べたりするプロの殺し屋的存在です。
しかし寿命が一週間と短く、加齢やストレスにも弱いNK細胞を守るためには……会社なんて行ってる場合じゃねえ!
悲しきコピーミス
こちらは『異常細胞』。細胞が分裂する過程で生まれてしまった、異常を抱えた細胞のことです。
この異常化した細胞は体を蝕むため本来排除されるべきなのですが、もともと仲間であったため、攻撃できるのはNK細胞とキラー細胞と限られています。
24時間、迫り来る脅威。
こちらは敵側の『病原ウィルス』のイラスト。細菌やウィルスは目に見ないほど小さく、空気中や食物など日常のあらゆる場所に存在しているため、皮膚や粘膜では防ぎきることができません。だからこそ今まで登場してきた免疫たちが必要不可欠となるわけですね。
目覚めよエリート
厨二心をざわつかせるキャッチのこちらは『ナイーブT細胞』。T細胞の中でもまだ一度も抗原情報に接触したことのない未熟な細胞です。
しかししここから経験を積み『エフェクターT細胞』へと進化した後、『ヘルパーT細胞』や『キラーT細胞』などそれぞれの役割へと別れていきます。
それにしてもネーミングがオール厨二ってすごい。
強くなれ、守り抜くために。
こちらは『インターフェロン – ガンマ』という細胞間伝達物質。体内の前線で侵入者と戦う免疫は、仲間たちへ情報伝達を行います。
その敵情報を受け取った際に、司令官のヘルパーT細胞が発するのがこのインターフェロン – ガンマです。これによってNK細胞やキラーT細胞等が活性化し戦力向上に繋がるのです。
正しい指示と、重い責任。
この『ヘルパーT細胞』は司令塔的存在の細胞。樹状細胞から届いた外敵情報を元に戦略と武装化の指示を出します。
しかし、戦力増強の判断や応援要請決定等の重要な役割を一手に担う存在のため、仮にその指示が狂うと免疫全体が混乱するリスクも。そのため、兄弟の『制御性T細胞』に自分を見張らせるという冷静さも兼ね備えています。
リンパ秘蔵の精鋭
すでに何度も単語は出てきました、こちら『キラーT細胞』。ヘルパーT細胞が司令塔とするならば、彼は前線で戦う最高戦力の兵士です。海軍の三大将みたいなもん
NK細胞が体内を漂いながら警備するのに対し、キラーT細胞はヘルパーT細胞からの出動要請を待って攻撃を開始します。
体内は彼ら二種類の前線の兵士によって守られているんですねえ。
最後の希望は、彼だけに。
最後の哀愁漂うキャッチコピーのこちらは『B細胞』。ヘルパーT細胞からの病原情報等を元に、病原体を無効化する『抗体』を作り出します。
この抗体はまさに最終兵器と呼べるもの。細胞やウィルスだけでなく、花粉等のアレルゲンに対しても有効なので人体にとって本当に必要不可欠ですね。
凄まじいまでの作り込みに注目
ここまで全11点ご紹介してきました。どれもキャッチコピー含め、とてもユニークなものばかり。ある意味漫画的に捉えれて僕はとてもわかりやすかったです!
それにしても間近で見ると、本当に細部まで作り込みがすごい。これら全て原画なのですが、よーく見ると細かい書き込み含め作者の思い入れを感じ取ることができます。
繰り返しですが全て原画よ、原画。細かいヒダの部分まで一本一本丁寧に書き込まれおり、当然ながら誰にでもできる代物じゃありません……。
これを無料で鑑賞できるとか本当にラッキー。いやあ、プレス向け展覧会来て良かった。
免疫を身近に感じるということもさることながら、こうしたハイクオリティな芸術に気軽に触れることができるというのも今回の展示会の醍醐味の一つですね。
作品④混沌の王国
続いては映像作品となります。ここでは、映像作家『勅使河原一雅さん』が表現する独特な免疫の世界観を体感することができます。
まずはこちらの動画をご覧ください。
#ぶらりのブログ用 pic.twitter.com/diQCCbunVp
— ぶらりぼっち日和@食レポ系ブロガー (@hitomishiri_da) 2018年2月24日
暗闇の部屋の中で怪しくうごめくカラフルな映像たち。まるでアメーバのように不規則な動きをしながら、部屋の中を怪しく幻想的に色づけしていきます。
これが勅使河原さんの作品『混沌の世界』。普段のアニメーション作品は『境界』をテーマに創り上げており、それを今回の免疫と掛け合わせたものとなっています。
免疫の曖昧さをアート化
しかし先ほどの動画含め、境界をテーマにしているにしてはなんだかそれが曖昧な感じがしませんでしたか?やたら滲んでいるというか……。
静止画で見ればイラストですが、動画だと滲んでいてどこがどういう形を創っているのか非常にぼやっとしていますよね。
これは『免疫』というものの曖昧さを映像で表現しているのです。
これを詳しく説明する前に一つ、ある実験についての解説をさせてください。
昔ニワトリの脳をウズラの脳に入れ替えるという実験があったそうです。
生まれてきた子は、見た目はニワトリで鳴き声はウズラというまさにキメラのような存在。
しかし免疫は、脳を敵だと認識してしまい攻撃をしてしまったそうです。結果的にそのニワトリ(ウズラ?)は死んでしまいました。
普段僕らは脳によって動かされていると思い生きていますが、この実験では免疫が脳を上回ってしまったのです。勅使河原さんはそこに着目。
『脳=自己』と『免疫=非自己』という風に考えそうですが、今回の実験のように非自己であるはずの免疫が自己である脳を殺してしまったりと、その『境界』は非常に曖昧です。
この曖昧でふわっとした概念である免疫や自己というものを今回の映像でカオスに、そして美しく表現していらっしゃるのです。
作品⑤スパイラリズム
最後は、これまた趣向が変わり音楽作品となります。音楽作家『清川進也』さんによる美しい音色を奏でる作品が展示されいます。
一瞬「これが音楽作品……?」と思いますが、実は60個の鍵盤をらせん状に組み合わせた木琴なんです!
この球体を上から転がすことで「威風堂々」が演奏されます。これも動画に収めました。ちょっと周囲の雑音が多いかもしれませんがよく耳を澄ませてお聞きください。
#ぶらりのブログ用 pic.twitter.com/lPhubbuWvG
— ぶらりぼっち日和@食レポ系ブロガー (@hitomishiri_da) 2018年2月24日
とても可愛らしい音色です。
この作品で表現しているのは『追体験』というもの。なぜこの音色がそれを表現することになるのでしょうか?
追体験によって進化する
この鍵盤楽器は木でできています。なので部屋の湿度や温度の変化に非常に敏感で、素材に微妙な変化が起きてしまいやすい。
この変化がメロディーにも絶妙な変化を与えてしまうのです。
例えばもともと22秒で演奏していたものが1秒ずれたり、本当に絶妙に音が変わったりと、その変化は些細なもの。明らかな変化ではありません。
しかしそれはあくまで目に見えづらいだけであり、確実に変化しています。清川さんはこれを『アップデート』と捉え、進化する楽器と表現しているのです。
これと同じことが免疫でも起こっているんですね。新しい病原体が体内に侵入すると免疫が働きそれを退治します。
このことを免疫が学習し、次に同じ物質が侵入してきてもさらに素早く対処できるようになっていく、という具合。
免疫が学習して進化していく様子を、音色の変化する楽器と重ね合わせているのです。
どちらも一度として同じ働きはしません。楽器も毎回微妙に違う音色にアップデートしていくし、免疫もより素早く対処できるようにアップデートしています。
僕はこの作品、今回の展示作品の中でも最も異色かなと思います。
他の四つは、免疫という概念を(方法の違いはあれど)視覚的に表現しているのに対し、この作品はあまり意識されることのない免疫をさらに目に見えない音楽で表現しているわけです。
この方向から表現しようとするのはかなり面白いですよね!
まとめ
いかがでしたでしょうか?
当日惜しくも来場できなかった皆様には少しでも本物の雰囲気を感じ取っていただく機会に、そして来場された方には当日を改めて思い起こす機会になっていれば幸いです。
それにしても、僕もこの展示会のプレス向け展覧会のお誘いをいただくまでは、
免疫……?細胞……?え、なんか地味そうだわあ
なんて思っていました、正直。というのも今まではゲテモノ系のイベントやら少し背筋がゾクゾクするようなイベントにばかりお邪魔していましたので……。
ですが今回のように、組み合わせることで新たな化学反応が起き『お!?なんだこりゃ!?』と思わせるようなイベントへの参加を体験できたのは非常に幸運でございました。
だってねえ、免疫の動きや概念をイラストや音で感じ取ろうなんて誰も考えないじゃないですか、普通!
その視点の鋭さと、そこから生み出される作品の面白さというものに強いショックを喰らいましたね(もちろん良い意味)。
今回第一弾とのことで、これからの取り組みも非常に楽しみ。これからはどんな予想外の仕掛けで僕らを楽しませてくれるのでしょうねえ。